三重県南東部の志摩半島一帯は、古くから「神宮の地」と呼ばれてきました。
この地には、約2000年の祭祀の歴史を持つとされる
伊勢神宮 があります。
内宮と外宮という二つの中心を持ち、20年ごとに社殿を新しくする式年遷宮が繰り返されてきました。
建物は新しくなりますが、形式と位置関係は保たれます。
更新と継続が同時に存在する構造が見られます。
伊勢は、国家祭祀の中心として位置づけられてきた時代が長くあります。
政治の中心地ではなく、祈りの中心地として機能してきました。
志摩の沿岸部では、海女漁が現在も続いています。
素潜りによる漁法は、身体と海との直接的な接触を前提としています。
また、古くから伊勢参りは「一生に一度は」と語られ、
庶民の大規模な移動が周期的に起きてきました。
権力や経済の中心とは異なる軸で、人の流れが発生していました。
ここで繰り返し見られる構造は、
・中心が空白であること
・形を変えながら同じ配置を保つこと
・自然環境と儀式が分離していないこと
です。
見落とされやすいのは、
伊勢が「何かを得る場所」としてよりも、
「整え直す配置」として機能してきた点です。
海、森、川、社殿が同一圏内に重なっています。
人はその間を移動します。
現在、この地域を訪れる人の多くは、
観光、参拝、リゾート滞在という形をとっています。
しかし構造としては、
外側の情報量が多い時代ほど、
内側を整える動線が強調されやすい状態が見られます。
新しいものを増やすのではなく、
周期的に「戻す」仕組みが組み込まれています。
その中で自然に起きているのは、
時間の感覚が直線ではなく、循環として感じられる状態です。
更新し続けながら、同じ場所に在り続けます。
移動しながら、中心は空いています。
伊勢志摩という地理的空間は、
その構造を現在も保持しています。
